フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

平政というかっこいい名前の魚を取りにいざ海へ

ヒ・ラ・マ・サ

(し・ば・ま・さの音程で)

ヒラマサとの初めての出会いは前回の話でクエをとった直後に遡ります

 

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クエを腰にぶら下げながらルンルンで海から帰宅の際、

 

目の前をすごい勢いで暴走するカヤックが横切りました。

 

よく見ると、カヤックの上で釣りをしている釣り客の竿から伸びた糸が、海中の何者かにカヤックごと思いっきり引っ張られていたのでした。

 

しかも激流を逆方向に笑

 

釣り人も負けじとリールを回し続け、数分間の格闘の末、80センチ級のブリを釣り上げていたのでした。

 

「いいサイズのブリですね!おめでとうございます!」

 

と話しかけると

 

「ブリじゃねーヒラスだ!舐めんな!」

 

え、舐めんな?ヒラス??

 

なんだそれ聞いたことないぞ。

 

と早速調べて見ると、

 

ヒラス

 

・本名ヒラマサ

・アジ科最大の魚(最大2.5メートルの記録も)

・水揚げ量が少なくブリよりも高級

・独特な上品な味わいで美味

・時速50キロで泳ぎ海のスプリンターと呼ばれている

・引きが異常に強く、針がかかったら海底に向かって一気に走る

 

とこんな情報が出てきました

 

特に気になるのは、海のスプリンターという別名

 

時速50キロってどんなんだよ

 

見つけたとしても一瞬で目の前から消え去るんじゃないのか?

 

そして、引きが異常に強く、海底に向かって一気に走る

 

ということは銛を刺してもそのまま海底に引き込まれるんじゃないのか?

 

そう考えた時、2年前のある事件を思い出すこととなった

 

そう、「イソマグロ海底引き込まれ事件」である

 

2年前の春、石垣島に大物を突きに行った時、

 

エントリーポイントからさほど泳いでいない所でイソマグロの群に遭遇した

 

何かでかい奴がいるこれは取らなければ

 

と僕は安易に思い、群の中でも1メートルちょっとくらいの中型個体にそーっと近づき思いっきりエラの近くに銛を打ち込んだ

 

恥ずかしながら、その時の僕は、海の暴走族と言われるイソマグロの存在を認識していなかったのだ

  

するとその瞬間、

 

イソマグロは狂ったように猛スピードで海底に走り

 

僕は体ごと海底に引き込まれた

 

被っていたフードは一瞬にして吹き飛び、僕は銛伝いにマグロにそのままの勢いで引きづられ続けたのだ

 

ちなみに、

 

僕がスポーツとしてやっているフリーダイビングでは、

 

海底まで自分で漕がずに何10キロの重りを持ち自動的に潜行していく、「バリアブルウェイト」という種目があるのだが、

 

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日本では、漕がずに深度が稼げちゃう分危険度が高いという理由で競技種目にはなっていない

 

しかし、今回僕は図らずとも天然のマグロを使いバリアブルウェイトをすることになってしまったのだ。

 

世界広しといえども、マグロを使って練習しているのは、僕だけであろうw

 

しかし、銛がエラに刺さったマグロをコントロールするすべは僕には一切なく、どこまで潜り続けるかよくわからない。

 

深度もマグロ任せだ

 

僕は心の中で

 

「こんな練習なんかしたくない、深くに行くな、早く銛よ抜けてくれ」

 

と唱え続けていたのだった

 

ここまで聞いて皆さんは

 

銛を離せばいいじゃんw

 

と思うかもしれないが、銛というのは意外と値段が高いもので、この必死に掴んでいる銛もその例外ではなく4万円以上もする代物だったのだ

 

しかも石垣にきたばかりの頃でこれを手放せば、明日以降のお楽しみは全部パーになってしまうこともあり、

 

銛を手放すという選択肢は一切なく、心の中で祈り、そしてマグロに引っ張られ続けるという事態になっていた

 

どのくらいの時間引っ張られてたかはわからないが、とうとう最後は僕の願いが通じたのか、この暴走野郎は自分自身の力でエラが切れ、

 

銛はめでたくマグロから分離し、僕はやっとの思いで無事銛とともに海面にたどり着き息を吸うことができたのだ

 

話を戻そう

 

そう、引きが強く海底に向かって走るというのはとても危険なことなことなのだ

 

しかし、その一方、それを上回る純粋無垢な好奇心が湧いてきて

 

すでに僕は、初恋のクエのことはとっくに忘れ、次の恋人候補に夢中になってしまっていたのだ

 

用意万端いざ出陣

次の日僕は、日の出とともに起きあがり、海が荒れてないことを確認し(流れは当然あるよ)次なる恋人を探しに行くことにしたのだ

 

昨晩google mapで地形図を確認し、エントリーポイントから2キロ沖合いの岩場が狙い目と踏んでいた

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そこまでの到達予想時間は1時間

 

焦らず一定のリズムでひたすらフィンキックを繰り返す

 

途中現れたイシダイやグレの群は当然のごとく無視をしひたすら突き進む

 

そしてとうとうポイント付近に到着

 

ちょうどタイミングがいいことに、キビナゴの群が僕を迎えてくれた

 

こいつらは大きな魚が好むベイト(餌)だ

 

こいつらがいるということは、それを餌にするであろうヒラマサがいてもおかしくない

 

さて、ここいらで潜り始めてみよう

 

と思った瞬間

 

目の前を何かがマッハで横切った

 

黄色い横線

 

頭が小さくすらっとした体

 

間違いない

 

ヒラマサだ 

 

昨日釣り人があげた魚体を観察し、特徴を頭に叩き込んだので間違いない

 

とうとう出会えた感動を噛みしめる暇もなくそいつは視界から一瞬で消えていった

 

まさに海にスプリンター

 

只者じゃない

 

しかし、ここいらを回ってることは間違いない

 

 

しばらく潜って待機しよう

 

水深6〜7メートルまで潜り、その辺の岩を掴んで自然と一体化し、殺意を消し、周りをゆっくりと観察する

 

ということを何回も繰り返すことにした

 

そして10何回目かに潜りこみ岩につかまり待機していた時

 

とうとうその時がやってきた

 

2匹のヒラマサが優雅にこっちに向かって泳いできたのである

 

1匹は90センチ級、もう1匹はメーターオーバーのサイズである

 

ここで一瞬昨日のカヤックのことが思い出される

 

80センチ級のヒラマサであの引き、もしこの大きい方を突けば昨日の比じゃないくらい引っ張られる

 

小さい方でも90センチ級、大事をとって小さい方にするか

 

相手に気づかれないくらいゆっくりと銛先を小さい方のヒラマサに照準を合わせる

 

しかし悪魔のささやきが聞こえる

 

『男なら大きい方いかな』

 

そしてそれに瞬時に同意する自分がいた

 

照準をゆっくりと大きい方に変えて行く

 

相手はこちらの存在に気づかず優雅にこちらに向かって進んでくる。

 

自然物の一部だと勘違いしてるようだ

 

殺気を消し、フィンを蹴って気配を感じさせないように、手で岩を少し押しゆっくりと僕もヒラマサに近づいて行く

 

そしてとうとう銛先が射程に入った

 

一発キルを狙うため頭めがけて銛を打ち込む

 

ぐさーーっ!!

 

貫通した!しかし一発キルではない

 

ヒラマサは、一気にありったけの力を使い海底に向かって走る

 

僕も負けじと海面に向かって思いっきりフィンキックする

 

力が完全に拮抗して上にも下にも動かない

 

このままだと息が持たない

 

クエの時みたいに近くの穴に潜ってくれたらいいのだけど、多分こいつは見えないところまで走り去ってしまうだろう

 

銛を強く握り直し、海面に向かって力を込めてフィンキックする

 

相手も疲れてきたのか徐々に力が弱まる

 

そしてとうとう海面まで到達

 

思いっきり深く息を吸い込む

 

呼吸を整え、銛を手繰り寄せる

 

相手はまだ暴れていて油断はできない状況

 

左のエラから手を突っ込みエラをがっちり掴む、そして魚体は足を使って羽交い締めにする

 

なんとか足に付けているナイフをとり、右のエラからナイフを脳天めがけてぶっさす

 

うまく脳みそを潰し、ヒラマサは痙攣し、目を見開き口を開けてとうとう絶命した

 

「よし、ヒラマサとったどーーーー!!」

 

相変わらず誰もいない沖合い2キロ地点の海の真ん中で叫ぶw

 

とうとうヒラマサが取れた

昨日恋をし、今日出会い、そして仕留めた

 

メーターオーバーのヒラマサ

 

昨日見たやつよりも一回り以上もでかい

 

やったやったヒラマサだ

 

ヤッホーーーい

 

幸せいっぱい胸いっぱい

 

ありがとうヒラマサ!

 

ありがとう海!!

 

ありがと自然!

 

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105センチ、10キロのヒラマサ 背景は変えてるよ

 

PS ここからこの巨体と銛を抱えながら、5キロの重りを体に巻きつけ、チビフィンで激流の中、2キロ先のエントリーポイントまで戻るのは想像を絶する地獄でした

 

俺は訓練中の自衛隊員か!!