「え、クエいんの!?」
大阪から長崎に引っ越す前に最後の買い物と、行きつけの銛専門店ネイビーカンパニーを訪れたところ、
オーナー息子君から、
「長崎はすごいいっすよ!魚たくさんですよ!」
「特に平戸はすごいですよ、クエいますよ!」
との情報を入手した。
クエといったらあの名前だけは知ってる高級魚!
泳いだ姿を見ることはもちろん、食べたこともないあの魚
ハタ科の魚はふつう
キジハタ、アオノメハタ、アカハタ、バラハタなど〇〇ハタと名前がついてるのに、クエだけはハタという名前がついていない
それだけでも特別な雰囲気を漂わせ、僕はまだ見ぬ恋人に気持ちを高ぶらせていたのだった。
そしてそのワクワクがとうとう現実化するチャンスが訪れた。
長崎への引っ越しも完了し、生活も落ち着き、長男の学校が休みとなった週末、家族で平戸へ行くこととなる。
前日、嫁が、キャンプ道具や調味料の準備をする中、
僕は、気持ちを高ぶらせながら、魚突き道具の準備をしていたところ
あれ?
ない?
あるべきものがない。
いつも使っていた黒のミューフィンがないことに気がづいてしまった。
嫁に聞いても当然、知らないと言われ、必死でどこにあるのか思い出していた所
あ、そうだ、、大阪に忘れたかもしれない、、
と絶望的な事に気がつく。
そして、代わりのフィンは無いかと家の隅の方まで探した所、
出て来た
いいのが出て来たんですよ
それが、これ
アマゾンで千何ぼで売ってるチビフィンだった。。。
まあ、なんとかなるかな?
という事でいざ平戸へ
※ちなみにガチで魚突きやってる人は最低5万円以上するカーボン製のロングフィンを使っている
〜平戸到着〜
とりあえずエントリーポイントから海を眺めると
うわ、やっぱり流れまくってる。。。
近くにいた地元ぽい人に海の様子を聞く
『こんにちは!流れ強いっすね』
『今はまだマシだけどもう少ししたら流れもっと強くなるぞ』
『そうなんですね、いつもこんな感じですか?』
『いつもはもっと早えぞ、今日はまだマシな方だ』
『いい日にこれてよかったです。ちなみに魚が多いポイントは地形的に右奥の方ですかね?』
『そうそう、そっちだなやっぱり』
(よし狙いは右奥、ざっと500メートルくらいか)
『ありがとうございます、では!』
という事で、海にどぼーん!
実は、この時期の海はまだ冷たくて3ミリウエットだと2時間が限界
それ以上やると体が芯から冷えて震えが止まらなくなる
この時までは短期決戦の予定で考えていた、、、
さてさて、海の中
視界は良好、春濁りといえど14mくらいは透明度がある
きれい!テンション上がる!!
これだと上からでも魚が見つけられる〜🌟
という事でルンルンで泳ぎはじめたのは束の間
あれ?全然前に進まない
なんでだろ、フェンキックをひとまずやめてみる
すると、なんと後ろに流され始めていたのだ。
いきなり海流が変わり始め、目標とは真反対の方向に思いっきり流されて行ってるのだ。
しかも流れもさっきより強く、流れるプール×5の力で流されている。
やばすぎるこれは無理だ
無理に流れに逆らって進むと体力も消耗するし、かつ全く進まない
流れに身を任す戦略に速攻で目標変更する
しかし、、
流れに身を任せて海中を探索するも
ぜんぜん魚がいない、、
全くいない
それもそのはず、魚が多く生息する根と言われる場所が全然ないエリアに迷い込んでいたのだ。
根というのは海の中に小山がどんとあるような所だ
今いる場所はずっと、のペーとしてて、根なんて全然見当たらない
根がなければ当然魚はいないのだ
きっとこの先には誰かいるはずと思って進むも、誰も現れない
何もない荒野をひたすら歩いている
たまに見かけるのは、無駄に肥大化したタカノハダイ(通称たかっぱ)だけだ
このふざけた顔を見よ
こいつは、魚突き界はもちろん、釣りの世界においても雑魚中の雑魚で誰にも相手にされていない”King of Zako”だ
しかし、無駄に警戒心が少なく、近くに寄ってもじっとしているため、すぐに獲れてしまう
初心者の頃一度和歌山の魚突き禁止エリアに入ってしまい、たかっぱを突いた直後、いかついスキンヘッドのサングラスかけた漁師に、
『お前ここで何やってんだ!突いた魚見せてみろ』
と言われ、獲物だけは渡さないと数分間しらばっくれていたのですが、とうとうらちがあかなくなって獲物を見せた所
『なんだザコかそいつならたくさんとっていいぞ、じゃあな』
と、禁止エリアで漁師のお墨付きをもらうという嬉しいやら悲しいやらの苦い思い出がフラッシュバックのように蘇る
まあ、そんな思い出話はさておき
話を元に戻すと
相変わらず魚はいない。
しかし、俺はこんな荒野でくすぶっていられない
まだ見ぬ恋人が俺を待っているのだ
との気持ちが通じたのか海流が逆になり始めた
本来の目的地の方向にうまいこと流れている
今度はフィンキックと海流でスムーズに目的地に近づいてくる
するとさっきまでの荒野は嘘のように起伏の激しい地形へと変わってきた
それに伴い、グレ(長崎でいうとこのクロ)やイシダイ、イシガキダイがちらほら現れだした
大阪に住んでいた頃、よく魚突きに行っていた福井や京丹後の海だと喜んで突いていた40センチ級のものもちらほら
しかし、ここは長崎平戸、日本の一級ポイント
こいつらを突きに俺はきたんじゃない
お目当てはまだ見たことも聞いたこともない魚、そう、クエだ
しかし、50センチ級のイシダイの群に遭遇した時は心少し揺れたんだけどね😅
まあ、そんなこんなで、とうとう大物がいそうな場所に到達
イシダイ、グレ、ボラクラーダ、クロダイの群もいやという程いる
しかしあくまで目当てはクエ
さて、しかし奴はどこにいるのか
そういえば、岩の下のクエ穴と呼ばれる大きい穴に住んでると聞いたことがあることを思い出した
そんな場所を見つけるためひたすらそれっぽい所を潜りまくる
チビフィンなので水深15メートルが限界だ
それでもくまなくいろんな穴を探す
そしてとうとう巨大な根の下のあたりが空洞になっており、いかにもクエがいそう(知ったかですけどね)な場所に到達する
水深は大体12、3メートル
ミニフィンでもいける
一気に急降下
穴の手前で止まり穴の上部をもち
ゆーっくりと穴の中を覗く
いた!!
クエだ!!
後ろを向いてこちらには気づいていない
初恋を経験した中3の時のように胸がドキドキする
なんて話しかけたらいいのか、いやどうやって刺せばいいのか
こちらに気づいてないので後ろからそーっと近づきバックから思いっきりぶち込んでやろう
そう心に決め、斜め後ろからそーっと近づき
思いっきり頭めがけて銛をぶちこむ
ぐさっと刺さる、しかし刺さりが甘い、奥まで入りきれていない
そして、それと同時に相手は海底に走り小さい小部屋に逃げ込む
この時に焦って銛を引っ張ってはだめだ
刺さりが甘いので抜けて逃げられるかもしれない
ここまでやっといて、逃げられては相手に悪い、最後まで仕留めなければ
男としての責任は果たそう
しかし息が限界に近づきつつある無呼吸状態で
これ以上プレイを続けるのはあまりにも危険だ
銛を一旦手放し海面に浮上する
場所を見失わないように浮上しながら岩の場所を記憶しておく
海面では焦らずに大きくゆっくり呼吸をする
このあと想定される小部屋から相手を引きずり出し、
さらなるプレイを続ける時間を考えると
十分に酸素を体にためておく必要があるからだ
海面でゆっくりと呼吸をし酸素を体にため、
心拍数を落としリラックスしてから再び潜行する
目標の場所を発見
銛はそこから出たままバタバタと暴れている
相手も相当興奮してるようだ、俺も一緒になって興奮してきた
銛がある場所まで到達する
しかし近づいても銛は一気に引かない、まだ抜けて逃げられるかもしれないからだ
穴の中に手を突っ込んで相手がいることを確認
エラに手をかけ一気に引っ張り出す
出ておいで子猫ちゃん
歯はギザギザなので噛まれないように注意する
刺さってるところを確認
ああ、やっぱり銛が中途半端にしか刺さってない
念には念を入れて銛を奥までぶちこみ、貫通させ返しを効かせる
そして左手をエラに突っ込み、右手で銛を持ったまま浮上
海面に到着
しかし最後まで油断は禁物だ
足に装着しておいたナイフでエラから頭のてっぺんの脳みそめがけてぶっさす
クエが振動して、目を見開き、口を開けたら締められたサインだ
ベルトにつけてある目串にエラから口にかけて紐を通し縛ったら完了
ここでようやく喜びがわく
『クエとったどーーーー!』
誰もいない沖合いで一人叫ぶ笑
いやー嬉しいな、大阪に住んでいた時は見たことも聞いたこともなかった魚を自分で見つけ自分でとった
やや小ぶりとはいえ正真正銘のクエだ
釣魚1400種図鑑をなんども見ていたから間違いない
そういえば一年前手帳に「3年以内にやりたい小さい夢」を30書いたのを思い出した
そのうちの一つが
・銛でクエを突き自分で捌いて食べる
だった
その時は見たことすらない魚を突くなんてできるのだろうかと思っていたのだが、今、小さい夢が実現した
実際に自分でクエを仕留め、現実として今目を見開いたクエが腰にぶら下がっている
なんかしみじみと嬉しくなった
ヤッホー!
クエさんありがとう、いてくれてありがとう!!
俺の夢を叶えてくれてありがとう!!
そして手帳通り、クエを自分でさばき食べました
もちろん内臓も全部
身がプリッとしててうまかった〜⭐️
ありがとう、海、クエ、長崎!