フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

海に潜る人は知っておきたい潜水反射

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どうも菊本です。

 

今回は、潜水反射について話したいと思います。

 

海で潜る機会の多い人はぜひ知識として蓄えリスクを減らしましょう。

 

 

潜水反射とは?

 

潜水反射とは、人間が水中を潜るときに、体が無意識に水中モードになる状態になることをいいます。

 

では、潜水反射はどのような条件のもとで起こり、どのような反応なのでしょうか?

 

潜水反射の起こる条件

 

潜水反射は次の条件下で起こります。

 

①息を止める

②水につかる

③潜って体が水圧を感じる

 

以上です。

 

ただしこれは全部の条件が揃わなくても機能すると言われています。

 

例えば、息を止めるだけ。

例えば、息をスノーケルで息を吸いながら水につかっているだけ。

 

このような条件下でも潜水反射は起こります。

 

潜水反射が起こると体はどのようになるのでしょうか?

 

潜水反射の反応

心拍数の低下

心拍数が下がっていきます。

 

僕の例で言うと、通常時65の心拍数が息を止めて水につかるだけでも55までいきなり下がります。

 

そして深く潜れば潜るほど50、45と下がっていきます。

 

最終的には30代前半まで下がります。 

 

これは、僕特有のことではなく、誰でも通常時の60〜50%まで心拍数が下がります。

 

心拍数が下がるとその分心臓の動きが少なくなり、体が消費する酸素が節約できます。

 

酸素が節約できると、より長い時間水中に滞在することができるという仕組みです。

 

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ブラッドシフト

ブラッドシフトブラッドシフトとは、体の末端の毛細血管が収縮することにより脳や心臓などの生命の活動において重要な器官にだけ血液を循環させる反応です。

 

余計なところに酸素を循環させないので、体が消費する酸素を節約することができます。

 

深く潜ると手足が冷たくなったり、また唇が青くなったりするのはそのためです。

 

唇は毛細血管が透けて赤くなってますが、血流が少なくなるに従い、だんだん青くなるのはこのためです。

 

脾臓の収縮

あまり話題にならないのですが、脾臓という器官があります。

 

潜水反射が起きると、この脾臓が収縮します

 

それにより、脾臓に溜めてあった赤血球が血液中に放流され、血液中は通常よりも多い赤血球を保持してる状態になります。

 

一回の拍動で運べる酸素が増えることにより、心拍数が低下しても、体は低酸素状態になりにくいということです。

 

結果、酸素の節約ができます。


まとめ


潜水反射は誰にでも備わった機能です。

 

たとえ、一回も水につかったことがない人でもです。


このような反応が人間に備わっているという事は、人間はもともと海の生物だったのかもしれませんね。

 

興味深い反応ですね!

フリーダイビングと水圧の密接な関係性

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ども、菊本です。

 

今日はフリーダイビングと水圧の関係についてお話しします。

 

皆さんご存知の通り、フリーダイビングは呼吸を止めてどのくらいの深さを潜れるかを競うスポーツです。

 

深く潜るためには、息を長く持たせることも重要ですが、それと同時に水圧に耐えられる体を作ることも大事となります。

 

さてどのくらい潜ると、どのくらいの水圧が体にかかってくるのでしょうか。

 

じっくり見ていきましょう。 

 

 

深度と水圧の関係

 

答えは、10メートル潜ることに1気圧ずつ増えていきます。

 

1気圧と言うのは、僕たちが普通に暮らしているときに感じている気圧です。

 

これが、10メートルの深さまで潜ると2気圧になります。

 

つまり、いつも僕らが感じている気圧の2倍の圧力を感じることになります。

 

そして20メートル潜ると3気圧、30メートル潜ると4気圧といったように、10メートル刻みで1気圧ずつ増えていきます。

 

僕は72メートルを潜ったことがあるのですが、その時に体にかかった気圧は8.2気圧でした。

 

地上の8倍以上の水圧になります。

 

結構大変そうですねw

 

では、気圧が増すことで、1番負担となる体の部位はどこでしょうか?

 

水圧と体の関係

 

答えは、肺と耳です。

 

つまり、通常気体で満たされている場所が、圧力が高まった時に負担になってくる場所となります。

 

まず肺から行きます。

 

8気圧の水圧がかかると、肺の大きさは何と8分の1の大きさになります。

 

これは皆さん得意な物理の法則で言うところの、ボイルの法則で、気圧と空間の体積は反比例します。

 

5気圧なら肺の容量が5分の1になります。

 

3気圧なら、3分の1です。

 

肺が小さくなると、横隔膜がせり上がります。

 

横隔膜は日常でせり上がるよりも、さらに高くまでせりあがります。

 

そのため、深く潜るためには、横隔膜の柔軟性が重要となります。

 

横隔膜が堅いまま深く潜ると、引きちぎれることは流石にないと思いますが、かなり痛めることになると思います。

 

また、肺の収縮には肋間筋(ろっかんきん)など他にも多数の筋肉が関与しているため、それらの柔軟性も重要となります。

 

次に耳です。

 

耳の鼓膜の内側の空間はかなり小さいため、気圧が少しでも高くなると、鼓膜が内側に引っ張られ痛みを伴います。

 

これを解消する作業が耳抜きとなります。

 

潜るときに耳抜きを頻繁に行うのはこのためです。

 

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まとめ

 

フリーダイビングと水圧の関係はわかりましたでしょうか?

フリーダイバーがしょっちゅうストレッチをしているのは、横隔膜の柔軟性を鍛えるとともに、柔らかい体の方が耳抜きがしやすいためです。

深く潜りたいと考えている方は、時間を使ってストレッチしましょう。

 

 

 

世界一簡単にできる息止めの練習方法

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息を長く止めたい皆さんこんにちは。

 

フリーダイバーの菊本です。

 

今回は、世界一簡単にできる息止めの練習方法について解説していきたいと思います。

 

この練習方法の名前はドライスタッティック(dry static)といいます。

 

陸上で息を止めると言う意味になります。

 

かなり簡単な方法ですので、意識して日頃の習慣に取り入れることにより、息止めの時間が長くなります。

 

ではさっそく解説していきます。

 

 

 

ドライスタティックの方法

 

ドライスタティックは数多くの方法がありますが、今回は1番気軽に、時間効率が良く、誰でもできる方法をご紹介いたします。

 

まずは、ストップウォッチかスマホをご用意ください。

 

時間を測るために使います。

 

ストップウォッチを初心者の方は30秒、自信のある方は1分10秒にセットします。

※自分の実力に合わせて調整してください。

 

体勢はどのような体勢でも大丈夫です。

 

静かに深呼吸を1分間続けた後、最後に息を思いっきり吸ってから、全部吐ききります。

 

そして息を止めます。

 

ここでストップウォッチをスタートします。

 

時間になったらアラームが鳴ると思いますので、鳴ったら息止めを終え、回復のため呼吸を6回します。

 

そして、また最後に息を吐ききってから、ストップウォッチをスタートします。

 

これを5回ほど繰り返します。

 

ただ、5回と言うのは目安で、出来る時間であれば何回でもオッケーです。

 

逆に少なくても大丈夫です。たとえ1回でも効果があります。

 

このトレーニングを続けることにより息止めの時間が長くなっていきます。

 

ドライスタティックはなぜ効果的か

 

息止めのが長くなると言う事は、体が高二酸化炭素に慣れていると言うことです。

 

ドライスティックを行うことにより、体へ高二酸化炭素状態を数多く経験させ、「苦しい」サインを出しづらくさせましょう。

 

このことにより息止めの時間は長くなります。

 

また、思いっきり息を吸ってからドライスタティックを行う方法もあるのですが、この場合単に時間がかかります。

 

皆さんは忙しいと思いますので、仮に10分しか練習の時間がないとすると、息を吐ききってから行った方が数多くの練習をこなすことができます。

※これは、フリーダイビング世界王者ウィリアムトゥルブリッジが言ってました。

 

参考記事

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これが息を吐ききってから、ドライスタティックを行う理由です。

 

もちろん、時間に余裕がある方は息を吸ってからのドライスタティックをしてもいいでしょう。

 

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潜水時間が飛躍的に伸び、今まで体験したことのない世界に感動することでしょう。

 

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フリーダイバーなら知りたい最強の耳抜き方法を伝授

どうも菊本です。

 

今回はフリーダイバーなら知っておきたい最強の耳抜き方法マウスフィルについて解説していきたいと思います。

 

これをマスターすれば、フリーダイビングにおいて耳抜きに悩まされることは無くなります。

 

さっさとマスターしてディープダイバーの仲間入りをしましょう。

 

 

 

マウスフィルとは

 

巷にはたくさんの耳抜き方法がありますが、フリーダイビングで1番使える耳抜きと言うのはマウスフィルになります。

 

特に50メートル以上のフリーダイビングを目指してる方は、マウスフィルのテクニックがないと絶対に潜れません。

 

全員がマスターしているテクニックです。

 

しかしながら、50メートルよりも浅いところで潜るようなフリーダイバーの方にも有効に使えるテクニックとなります。

 

若干特殊な方法に見えるので、難しいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、原理を知り練習すれば、かなり簡単ですので気楽にトライしてみて下さい。

 

マウスフィルの原理

 

マウスフィルの原理と言うのは、肺から直接空気を送り込んで耳抜きをするのではなく、口に溜めた空気を使って耳抜きをすることになります。

 

その際に重要な事は喉を閉めて、肺と口の中の空間を分離させることです。

 

口の中の空気だけを使って耳抜きを行います。

 

マウスフィル方法

 

1番簡単な陸上でもできるマウスフィルの方法をご紹介いたします。

 

①まずは口を閉じて「んーーー」と発音してみて下さい。

 

できるだけ長く少し大きい音がいいでしょう。

 

②次に鼻を指でつまみながら、口を閉じ「んーーー」と発音してみてください。

 

肺からの空気を使い、「んーーー」と発音してるので、自動的に口の中の空気は増えてきてほっぺたが膨らんでくると思います。

 

③そのまま、ほっぺたをMAXパンパンまで膨らまします。

 

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こんな状態です。

 

④その時あなたの鼓膜は張っていて、耳抜きできている状態でしょうか?

 

できているなら成功です。

 

これがマウスフィルです。

 

簡単でしょう?

 

4、フリーダイビングでマウスフィルを使う場合

 

フリーダイビングでマウスフィルを練習する場合、まずは水面で試してみるといいと思います。

 

水面でマウスフィルが成功している状態で潜り始めます。

 

マスクをつけて潜る方が多いと思いますが、その場合、マスクの上から鼻をつまみ潜っていきます。

 

ノーズクリップが使える方は、ノーズクリップを使ってください。

 

水圧の関係で口の中の空気が徐々に小さくなってきますので、放っておくと耳抜き状態が解除されてしまいます。

 

ほっぺたで優しく押して、口の奥と鼻の奥が合流するあたり(耳管があるところ)に押し込みましょう。

※後頭部に向かって空気を送り込むイメージです。

 

口の中の空気が無くなるまで、マウスフィルは継続できます。

 

ちなみに喉の締めが甘いと、口から肺に空気が漏れます。

 

慣れてきたら、喉も意識しましょう。

 

マウスフィルは、他の耳抜きのように圧を感じるたびに定期的に耳を抜くのではなく、耳はずっと抜きっぱなしで潜ることになります。

 

まずは浅い深度で練習をしてみて、上手くなれば深い深度でトライしてみるのがいいと思います。

 

最後に

マウスフィルは簡単です。

全く難しくありません。

そして誰でもできます。

 

マウスフィルをマスターすることで耳抜きに苦労することなく、深い深度までフリーダイビングできるようになります。

 

 

楽しみですね!

 

さっさとマスターして、ディープダイバーの仲間入りをしましょう。

 

 

フリーダイビング世界記録保持者 William Trubridge って誰?

 

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ども、フリーダイバー菊本です。

 

今回は、フリーダイバーなら知っておきたいWilliam Trubridge(ウィリアム)の紹介をしたいと思います。

 

 

William Trubridge(ウィリアム・トラブリッジ)とは?

 

フリーダイバーでないとなかなか彼のことはご存知ないでしょう。

 

実は彼、フリーダイビングの種目の一つコンスタント・ノーフィン(CNF)の世界記録保持者です。

 

コンスタント・ノーフィンとは、呼吸を止めてフィンを履かずに、垂直方向にどのくらい潜れるかを競う種目です。

 

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そして、その記録は102mで、この種目で100mを超えて潜れるのは現在、世界中で彼一人となっています。

 

その時の映像はこちらです。

 

youtu.be

 

一回失敗してからの成功

 

かっこいいですね!

 

そんな彼ですが、こちらのフリーダイビングの教科書Speacific Training For Freedivingに単独ページがあり、そこでは、フリーダイビングのトレーニング方法について書かれていました。

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せっかくなので頑張って翻訳しました。

 

内容をざっくり言うと、

 

ダイナミックアプネアを練習しよう

たとえ皆さんが海の競技をやりたいと考えていても、プールでの練習ダイナミックアプネアは効率のいいトレーニングだ。

 

と彼は言っています。

 

耳抜きの練習はできませんが、泳ぐフォーム、体を高二酸化炭素、低酸素に慣らすトレーニングは十分にできます。

 

また、天気に左右されず、練習人数も2人で賄え、長時間できるところもいいですね。

 

ウィリアムのメニューは一般人には不可能なのでここでは紹介しませんが、実際にトレーニングに取り入れたい方はこちらを参考にしてください。

 

www.jomak.work

 

陸上で息止めのトレーニング

方法は、息を思いっきり吸ってから息がどれだけ持つか測るのを繰り返すよりも、息を全部吐き切ってからの方がトレーニングとしては有効だ。

 

と彼は言っています。

 

理由として、息を吸って時間を止めると、5分も6分も体が苦しくなるのを待たないといけないけど、吐いてからだと短時間で済むから

 

とのことです。

 

要は、時間を節約できるので、タイムパフォーマンスがいいと言うことですね。

 

皆さん忙しいと思うので、この方法で時間を有効活用してトレーニングしましょう。

 

最後に

菊本は、2019年ニースでの大会で彼に会ったことがあります。

 

彼の奥さんは、福本幸子さんという日本人で、元女優だったみたいでとても綺麗な方でした。

 

一緒にニースに行った日本人フリーダイバーは幸子さんと仲の良い人が多くて、

 

「久しぶり!元気?」

 

と挨拶していました。

 

僕もその流れで、幸子さんとウィリアムに挨拶だけさせてもらいました。

 

ウィリアムは、毎年バハマでvertical blue という大会を主催しています。

 

僕が憧れている大会で、

 

「今度参加するね!」

 

とだけ伝えました。

 

バハマは遠いですが、いつか参加してみたいです!

 

フリーダイビングの天才|木下さゆりとの思い出話

ども、フリーダイバー菊本です。

 

今日は、さゆりとの想い出話を語ります。

 

8ヵ月前の2019年7月15日海の日に僕の大好きな友達であり、また、フリーダイバーの先生でもあった木下紗祐里は突然あの世に逝ってしまいました。

 

正直、この8ヵ月間はずーっと悲しくて、夢にはさゆりが何回も出てきました。

 

そして朝に、そのことが夢だとわかり、何回も落ち込みました。

 

今まで、色々な人にさゆりの話をされました。

 

さゆりが本当に色々な人に愛されていたことを知ると同時に、その話のたびに僕は悲しい気持ちでいっぱいになりました。

 

あまりにもたくさん、さゆりの話が出るので、最後の方は適当に相槌をうつだけにしていました。

 

話始める人は悪気がないかもしれませんが、僕はその都度深く悲しみ、それが自分の受け止められるキャパシティを超えていたからです。

 

しかし、時間が経過しやっと心が落ちつてきて、さゆりとの思い出を少し綴りたいと思うようになりました。

 

 

 

さゆりとの出会い

僕が、さゆりと初めて会ったのは、2015年5月大阪で行われたフリーダイバーの飲み会でのことでした。

 

そこに、Vertical blueというフリーダイビングの大会帰りのさゆりがいたのです。

 

周りのみんなはさゆりに対して

 

「さゆりちゃんおめでとう!」

「すごい!」

 

と祝いの言葉を送っていたのですが、僕はなんのお祝いなのかさっぱりわかっていませんでした。

 

聞くと、世界中の強豪が参加すると言われるvertical blueでさゆりが優勝したというのです。

 

ノーフィンで60m、フリーイマージョンで80m潜ったというのです。

 

僕は信じられない気持ちになりました。

 

僕はその当時、フリーダイビングを始めて間も無く、確か潜れる深度も30mくらいで80mなんてまさに夢のまた夢だと思っていました。

 

また、僕が練習していた神子という場所は最大深度が52mで、練習に参加していたメンバーも30mから40mくらいを潜る人がほとんどだったので、フリーダイビングとはそうゆうもんだと思い込んでいました。

 

それが目の前にいる女の子が80m潜ったということを知り、本当にびっくりしました。

 

そして、さらにすごいことに、その時さゆりはフリーダイビングを始めてまだ2年目くらいでした。

 

始めた時期は僕とさほど変わらないこの子が世界一をとる。

 

僕にとって、とてもワクワクする出会いでした。

 

さゆりに沖縄の大会に誘われる

会も終わりかけの頃、さゆりに3ヵ月後に開催するフリーダイビング沖縄大会に出てみないかと誘われました。

 

その時僕は、その誘いを全く嬉しくなかったのを覚えています。

 

僕の心境はこうでした

 

「こんな化け物どもが出る大会なんて絶対出たくない」

 

ということで、

 

「いや、出ないw」

 

と言いました。

 

「なんで」

 

と言われたので、

 

「俺は30くらいしか潜れないから、恥ずかしい」

 

と言いました。

 

すると、

 

「そんなの全然関係ないよ!気にしてる人は誰もいないよw」

 

とさゆりは答えました。

 

僕は、誘うために適当なことを言ってるのかなとも思ったのですが、話してるうちに少しづつ興味が湧いてきて、最終的に参加すると言いました。

 

その時は、わからなかったのですが、今ならさゆりが言っていたことがよくわかります。

 

フリーダイビングは、他人が潜った深度をあまり気にしないスポーツです。

 

もちろん、深く潜れた人には、「すごい」という気持ちが湧くのですが、浅くしか潜れない人に「しょぼい」という気持ちは全くわきません。

 

それぞれが、それぞれの深度に対して課題をクリアするために頑張っている姿をリスペクトし合うスポーツだからです。

 

沖縄大会始まる

 

沖縄に到着すると、さゆりが迎えにきました。

 

そして会うなり、「今回は残念だったね」と言いました。

 

「え?」

 

と言うと、

 

「メーリスきてなかった?台風で大会中止だよ」と言われました。

 

メーリスって何!?

 

メーリスの存在をしらなかった僕は残念がると思いきや、「あっこれで大会でなくて済む良かった」とちょっと安心してしまいましたw

 

でもせっかくなので、沖縄で台風が来るまでの間の3日間みんなで練習することになりました。

 

次の日早朝、指定された港に言ってみると、フリーダイバーがたくさん集まっていました。

 

船に続々と乗り込み、深いポイントまで15分くらい走ります。

 

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確か10人くらいフリーダイバーが乗ってたと思います。

 

みんな、それぞれが今日潜る深度を責任者のさゆりに伝えていきます。

 

僕が、31mと答えると、横の人が40m、その横の人が45mと続いていき、一番潜る人はなんと80mを申告していました。

 

なんで練習でこんなに潜るんだよと思いましたが、みなさんこれがウォーミングアップの深度とのことでさらに驚いたのを覚えています。

 

この時の練習は申告が浅い人から潜ると言うことで、僕がトップバッターになりました。

 

僕は、神子ではそこそこ潜れていた方だったので、31mが一番浅い深度だと知り、フリーダイバーやべえと心底思いました。

 

ちなみにフリーダイビングの練習はこんな感じで行われます。

 

言葉で説明すると長いので写真でどうぞ

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暑すぎて上半身裸の菊本



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フリーイマージョン

※フリーイマージョンなのに足にラニヤードをつけてない無知の菊本

 

こんな感じで沖縄の綺麗な海で存分練習できました。

 

そして、これは練習終わりの写真

 

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世界の篠宮龍三と写真をとってると写真に写り込んで来るお茶目なさゆりw

 

練習終わりは、さゆりん家でパーティ

 

3日間の練習を終え、台風がきました。

 

沖縄の台風はとても強いので、海は荒れまくり、練習どころではありません。

 

と言うことで、エネルギーを持て余した僕らはさゆりんちでパーティをすることになりました。

 

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ちょっと見にくいですが、奥の真ん中がさゆりです。

 

さゆりは料理が得意だったので、みんなのために、サラダやカレーなど本当に美味しくて体に良さそうなものをたくさん作ってくれました。

 

そのおかげで、酒も進みましたw

 

次の日が練習だと僕もさゆりも酒は飲みませんが、台風で確実に明日海にいけないことがわかっていたので、なんの躊躇もなくひたすら酒を飲んでいました。

 

かなりの時間が経ち、みんな潰れたり、帰ったりする中

 

僕らは朝まで酒を浴び続けていました。

 

最後の方は、ラッパ飲みで二人でワインとかウォッカとかを回し飲みしていました。

 

寝てる人にいたずらしたり、酔っ払ってわけの分からないものを作って潰れてる人を起こして食べさしたり、爆音で音楽かけて踊ったり、屋上に行って台風を感じたり

 

その度にゲラゲラ笑いながらとても楽しい時間を過ごしました。

 

この時のおかげでさゆりとは仲良くなれました。

 

さゆりとの楽しかった練習

 

沖縄の出来事から僕らは、しばしば一緒に練習することになります。

 

さゆりの実家はプールなので、そこを貸切にして贅沢に練習したりしてました。

 

スタティックと言う息止めの練習を二人でしていた時のこと、さゆりは僕に大切なことを教えてくれました。

 

「息を止めて苦しくなってきても、体の力を抜いて自分の体をつぶさに観察するといいよ」

 

そんなこと言われても初めはよく分からなかったのですが、練習を重ねるうちに徐々に、さゆりのアドバイスを理解できるようになってきました。

 

「苦しいと感じてさせくれる体に感謝する」

 

 こうゆうこともよく言ってました。

 

確かに苦しいと言うサインがでなければ僕らは頻繁に失神してしまいます。

 

新しい視点を彼女から教わりました。

 

海での練習もよく付き合ってもらってました。

 

僕が、60mにどうしても到達できなかった時

 

「息が続く気がしない、絶対無理」

 

と伝えたところ

 

「完全にリラックスさえすれば絶対いける」

 

と言われ

 

本当に後のことなんて一切考えずにその瞬間瞬間で、「体をリラックスすることだけ」を意識したら本当に60m潜れました。

 

そして、それから数日のうちに記録はどんどん伸び、最後の練習日にはなんと70mを潜れるようになっていました。

 

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この写真は70mの記念にとった写真です。

 

あんな短いアドバイスのおかげで自分の気持ちがガラッと変わり、すぐに結果に繋がったことにびっくりしました。

 

さゆりのいる長崎に引っ越す

僕は、1年前大阪から長崎に引っ越してきました。

 

長男がきのくに学園に行きたいと言うので、僕らは一家ごと長崎に移住してきたのですが、たまたまそれがさゆりの実家のすぐ近くでした。

 

さゆりはその時、沖縄に住んでいたのですが、長崎の実家にもしょっちゅう帰ってきてました。

 

帰ってくるたびに、一緒にプールで練習したり、ランチを食べたり、色々な話をしました。

 

ちょうどその時、さゆりは、

 

「ねえねえ私新しい彼氏ができたんだよ、じょうまくんと同じ魚突き好きなんだよ」

 

と言って、写真を見せてくれました。

 

その写真の魚がめちゃくちゃデカかったので、僕は彼氏の話はすっかり忘れて、

 

この魚どこでとったの?

 

なんて魚?

 

と答えて、めちゃくちゃ笑われましたw

 

改めて、写真をみると日本人ではなさそうだったので、

 

「何人?」

 

と聞くと

 

「オーストラリア人なんだ、この前のヨーロッパの大会で会ったんだよ」

 

と言ってました。

 

彼氏はフリーダイビングに対しての熱意もすごいみたいで、彼から教わった新しいトレーニングを僕にも教えてくれました。

 

例えば、体とプールの端っこを強力なゴムで結んで20秒間無呼吸で泳ぐ

 

といったトレーニングも二人でよくやりました。

 

このトレーニングは少しでも気をぬくと、一気にプールの端っこまで引っ張られてしまうので、本当に大変でしたw

 

プールでの練習が終わり、さゆりが沖縄に帰る直前、こんな話をしてくれました。

 

「長崎を出た後は、一旦沖縄に帰って、それからギリシアで1ヵ月トレーニングして、8月の末からニースに入るんだ」

 

「ニースの海は冷たいから早めに行って慣れとかないとね!」

 

この時、僕も日本代表に選ばれた直後であったので、緊張してた気持ちがますます緊張したのを覚えています。

 

そして、さゆりのプールを出た直後、

 

「次はニースで」

 

と言って、お互いハイタッチして別れました。

 

そして、これが僕らが交わした最後の言葉になります。

 

次に会ったのは事故直後の沖縄の病室で、その時のさゆりは言葉を発することができませんでした。

 

最後に

さゆりは僕の大事な友達であり、先生でした。

 

僕のくだらない話やアイディアに対しても、いつも、

 

「いいね、いいね、やろうよ!」

 

とよく言ってくれました。

 

海の練習をしている時は、フロートにつかまりながらよくフリーダイビングのことについて話していました。

 

僕が70m潜った時は、30mまで迎えに来て水面まで一緒に泳ぎながらずっと見守ってくれていました。

 

さゆりが見守ってくれていたから、僕はリラックスできて深く潜ることができました。

 

僕が今潜れるようになったのも全部彼女のおかげです。

 

あの時、大阪で彼女と会うことなく、沖縄に行くこともなかったら、今のような自分は絶対に存在しませんでした。

 

偶然の出会いが僕をここまで成長させてくれました。

 

 

僕は、さゆりと、もっともっと一緒に練習したり、大会に出たりしたかったです。

 

ニースも本当は彼女と行く初めての世界大会でした。

 

さゆりのおかげで随分潜れるようになった自分を彼女に見ていてもらいたかったのかもしれません。

 

そして僕も日々進化する彼女の潜りを間近で見たかったのです。

 

そんなことを思っていましたが、残念ながら彼女はニースに来ることができず、海の日に遠いところへ逝ってしまいました。

 

この8ヶ月間本当に悲しくて思い出しては泣いていましたが、少し落ち着いて来ました。

 

この悲しさは一生続くかもしれませんが、ブログに思い出を綴って行くことで少しづつ整理していこうと思います。

 

さゆりはもう居なくなっちゃったけど、さゆりとの思い出やさゆりの言葉はまだ僕の中で生きてるよ。

 

肺活量を増やす方法 パッキングってなに?

ども、フリーダイバー菊本です。

 

もっと深く潜りたい

息を止めてもっと長く泳ぎたい

肺活量を増やしたい

 

とお考えの方に今回はパッキングという呼吸法をご紹介します。

 

 

パッキングとは

 

限界まで息を吸った後にさらに肺に空気を詰め込む技術になります。

 

英語では、Packingと書き、意味は詰めるです。

 

パッキングを適切に行えば、肺活量を20%以上増やすことができます。

 

パッキングは別名、舌咽頭(ぜついんとう)の吸入とも呼ばれます。

 

もともとは、呼吸筋(横隔膜、肋間筋など)が衰弱して呼吸をうまく行えない人のために開発された技術でした。

 

それを肺活量を増やしたいフリーダイバーが応用することになります。

 

しかし、パッキングはフリーダイバーだけのものではありません。

 

肺活量を増やしたい方全員に適用できる技術となります。

 

ただ、このパッキングはやりすぎによって肺を損傷したり、心臓を圧迫したりなどのリスクを伴います。

 

技術を身につけても、一気にやりすぎず少しづつ体を慣らしていく方が良さそうです。

 

パッキングの方法

 

①椅子に座りリラックスします。

②息を目一杯吸い込みます。

③鼻をつまむか、ノーズクリップをします。

④喉を閉めます

⑤口を開き外の空気を口に貯めます。

⑥その空気を飲み込み(肺に詰め込み)ます。

⑦再び喉を閉めます

⑧口を開き外の空気を口に貯めます。

⑨その空気を飲み込みます。

 

以下繰り返し

 

コツ

 

せっかく詰め込んだ空気が肺から漏れないように喉は常に締め気味にしといた方が良いでしょう。

 

 

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パッキング 解説図

イメージできない方のために僕の完璧な絵でご説明します。

 

この図は、肺を最大まで膨らませて喉を閉じている状態です。

 

この状態で、外からの空気を口に含み、飲み込むように空気を肺に送ります。

 

口から肺へ向かう圧力の方が、肺から外に向かう圧力よりも大きいため、一回のパッキングで約70ccの空気を肺に詰め込むことができます。

 

肺の容量が5ℓの人なら一回で1.4%肺が大きくなります。

 

これを15回ほど繰り返せば、肺の容量は20%増えることになります。

 

パッキングのメリット

 

言わずもがな、肺活量が増えることが一番のメリットとなります。

 

それは、一時的に肺活量が20%増える

 

ということだけではなく、定期的にパッキングをすることにより、通常の肺活量も増えていきます。

 

肺、横隔膜、肋間筋が膨れた状態のことを覚えて、柔軟が良くなるからです。

 

パッキングのリスク

 

パッキングとは、日常ではありえない大きさまで肺を膨らます行為です。

 

そのため、肺の過膨張による肺の損傷リスクがあります。

 

また、心臓は膨張した肺に圧迫されることになります。

 

そのため、いつも通りの働きをすることができなくなり、血圧が下がることになります。

 

血圧が下がると、脳に十分な血液を供給することができなくなり、結果、めまい、ふらつき、最悪はブラックアウトするリスクがあります。

 

そのため、この技術を取り入れる際は徐々に体を慣らしていってください。

 

決して無理は禁物です。

 

パッキング以前に、息を目一杯吸っただけでもなんだか肺が苦しい

 

と感じる方は、まずは目一杯息を吸い込んだ状態に慣れてください。

 

それがクリアしたらパッキングの回数を3回くらいから始めましょう。

 

それに慣れたら一回づつパッキングの数を増やしていきます。

 

まとめ

 

パッキングは肺活量を増やすのに有効なトレーニングです。

 

しかし、それ相応のリスクもあります。

 

無理をせず、徐々に体を慣らし、上手に肺活量を増やしていきたいですね。