フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

2021年フリーダイビング世界大会の日本代表(2回目)に選ばれそうです

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「おめでとうございます。2021年キプロスで行われるフリーダイビング世界大会に菊本丞馬さんは日本代表選手として選ばれる可能性がありますので参加の是非を教えてください」

 

2021年6月某日

 

こんなメールが日本フリーダイビング協会から送られてきました。

 

そして、僕はこのメールを受け取った時、それをゴミ箱に即座に放り込むか、読まなかったことにするかの2択で葛藤することになったのです。

 

行くという選択肢は0でした。

 

僕は、2019年フリーダイビング世界大会に出場し、72mの自己新記録(日本歴代男子3位)を成功

 

そして、それからは、そのぬるま湯の余韻に浸り続け、この2年間、トレーニングらしいトレーニングは全くしてこなかったのです。

 

主にフィリピンでトレーニングしていた僕は、

 

コロナだから練習できないんですよ。

 

と、周りに言い、生きてきました。

 

2年ごとにある世界大会も、今年はどうせコロナだから、開催されないでしょと練習をしない大義名分にしてきたのです。

 

当然、僕の体は鈍り続け、フリーダイビングという言葉も忘れかけてた頃、突如として冒頭のメールが届いたのです。

 

「こんな身体で世界と戦えるわけがない、2年後の大会に備え、今年は辞退しよう」

こんな考えが頭を埋め尽くしました。

 

そして体の衰え以外にも行けない理由がたくさんあったのです。

 

まずは、仕事

フリーダイビングから手が離れてた僕はこの2年間で仕事を2つ立ち上げていました。

 

宿泊施設アソビヤハウス壱岐と薪の販売業です。

 

コロナを準備期間と考え、僕の持ってる貯金と時間を全て投下し、物件の取得、設備投資、改装、広告を行い、コロナ明けを待って本格始動させる準備のまだ途中なのです。

 

この中途半端な状態で一緒に仕事してくれてる人達に迷惑がかかるのではないか?

家族に迷惑がかかるのではないか?

という不安がつきまとっているのです。

 

そして、第二にお金です。

新しい事業をスタートするため、貯金は全て使ってますので、手元資金がいっさいありません。

 

フリーダイビングの大会は、まだまだマイナースポーツのため、賞金などは当然ありません。

 

むしろ、大会運営費用としてお金を払わないといけず、それに加えて、航空券、宿泊費、練習費用などは実費でやりくりしないといけないのです。

 

また、大会までに本格的にトレーニングを始めるとなると、練習環境と練習パートナーを求め、沖縄や奄美大島などに遠征で練習しにいかないといけなくなります。

 

日本で安心して潜れる深い海はそんなにたくさん無いのです。

 

もちろん、その際の交通費や宿泊費、練習のための船代などは実費となります。

 

頭が痛くなるので計算したくないですが、全部合わせると少なくとも150万円〜200万円くらいはかかりそうです。

 

これは今の僕にとって、とても大きい金額なのです。

 

第三に妻のゆきです。

 

この数年間、フリーダイビングにくびったけでフラフラしていた僕が、コロナをきっかけに、まともに仕事を始めたことを妻は喜んでいました。

 

2人の息子はもう5歳と8歳になり、食べ盛り。

 

家計を苦しくさせないために、僕はこの二年間集中して仕事をしてきました。

 

徐々に形になってきたことで、妻は喜び、妻に安心を与えられていることに自分でも満足していました。

 

ここまで積み重ねてきた仕事を途中で投げ出し、大会までの3ヶ月間を練習にあて、さらにお金を150万円も使うことで妻はどのような気持ちになるのか?

 

ダメだ。絶対悲しませることになる。

フリーダイビングよりも妻の気持ちを優先しよう。

僕はメールをもらったことをきっかけに、より仕事を頑張るきっかけになったなと感じていました。

 

〜その後、数日寝かせて妻に報告〜

メールをゴミ箱に葬るか、読まなかったことにするかの葛藤中でしたが、とりあえず妻にメールの内容を伝えてみることにしました。

 

「今年の世界大会、代表で選ばれたよ。場所はキプロスだって。でも、仕事があるし、金もないから、今回は行かないことに‥」

 

「おめでとう!!私も前みたいにサポートとして行っていいんだよね?安心して潜れるように健康管理は任せてね」

 

「え?まさか行こうとしてる?」

 

「もちろん当然でしょ。せっかく選ばれた日本代表行かなくてどうするの?」

 

「でも、体は鈍ってるし、仕事は途中だし、金はないし…」

 

「何言ってるの?その辺はどうにでもなるでしょ、仕事困ってるなら、私全力で助けるよ」

意外な妻の返答に面をくらいながら、少しづつ、

 

「もしかしたらいけるかもしれない」

 

という希望がひそかに心の奥から湧いてきたのです。

 

そして、すぐに「できることから始めよう」

 

と、2年前につづっていた練習ノートを引っ張り出し、練習を始めることにしました。

 

数えると今日が大会の100日前です。

 

100日あればなんとかなる。

 

妻の言葉に背中をおされ、僕は完全にやる気スイッチがオンになりました。