フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

フリーイマージョン72メートル成功となるか

この記事はここからの続きです

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大会前日夜

 

僕は妙に落ち着いている

 

未知の深度72メートルに対して一通り緊張し終わったためだ

 

そして明日は必ず成功できると信じきっている

 

実は、数日前に僕は新しい耳抜きのテクニックを見つけてしまいそれを使いたくてウズウズしている

 

僕の耳はフリーダイビングに向いているらしく、深度20メートルまでは鼻の奥に少し力を入れるだけで、ほぼオートマティックに耳が抜けてしまう

 

ノーズクリップをしてるからではなく、マスクでも同じように抜ける

 

耳抜きにはいくつか方法があり、大体の人は、バルサルバ法やフレンツェル法というやり方で抜いてるらしいが、僕のやり方はBTB法というやり方らしい

 

深度が浅いところではそれぞれ色々なやり方があるのだが、20メートル以降、深度が深くなるところではほとんどの人はマウスフィルという方法に切り替える

 

口をパンパンに膨らませ、肺に逆流しないように喉を閉じ、鼻と口をつなぐ軟口蓋を開け口の空気を耳管に送り込みながら耳抜きをする

 

僕はこのテクニックを2年前に習得したのだが、実はあまりしっくりきておらず、今まで細かい調整を繰り返してきた

 

マニアックな話になるが、以前は口の空気をずーっと耳管に送り続けるやり方でやっていた。

 

そして今は改良して定期的に休んだり押したりするやり方に変えている。

 

そして数日前に発見したテクニックというのは、なんと、口の空気を意識的に耳管に送ることはせず、口の中の空気にだけ集中しながらそれをキープするだけ

 

というやり方だ

 

多分、フリーダイバー以外は何を言ってるか意味不明だと思うが構わず続ける

 

これは画期的だ

 

今まで耳管に空気を送り続けることを意識していたため、口に余分な圧力をかけ続けていた

 

それだけでなく、肩や首などもそれに伴って緊張していた

 

さらに、力を使っていただけに体の心拍数は幾分か完全リラックス時よりも上昇してたことが考えられそれが多少の負担となっていた

 

しかし、今回見つけたテクニックは口の中に空気をためているだけ!

 

余分な力を一切必要としない

 

これならどこまでも潜れる気がする

 

大会前日このことを考え、僕はニヤニヤしていた

 

そして大会当日

 

いつものように起きてからのルーティン、ストレッチと呼吸のトレーニングをこなしいざ会場へ

 

家族と記念撮影を済ませ 

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家族で記念撮影

 

子供たちと気合を入れ

 

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気合のポーズ

こんな船に乗って沖合の会場へ

 

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会場プラットホーム到着 緊張隠しの菊本

 

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会場 プラットホーム

 

時間になったから海に入り、集中

 

前の人が上がってから6分くらいの時間をもらえ、2分前からカウントダウンが始まり潜っていく

 

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 変なメガネをしているのはリキッドゴーグルという名前だ

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ゴーグルの中に水を入れメガネの前に付いているレンズで屈折率を調整し水中で見えるようになっている

 

ゴーグルの中が空気だけだと、潜ってる間水圧でどんどん体積が小さくなっていき目が飛び出してしまう

 

それを防ぐためにこの変なゴーグルをつけている

 

さて、5分前

 

余計なことは考えない

 

ひたすら、ゆ〜っくり息を吸って、吐くを繰り返している

 

僕の場合8秒で吸って15秒で吐くくらいゆっくりと呼吸する

 

吐くときに全身の力をすっと抜いていくようにする

 

1分前

 

繰り返し続ける

 

30秒前

 

あと1回吐いて吸ってでオフィシャルトップの時間だ

 

最後の10秒はパッキングといって、口をパクパクさせ通常よりも多くの空気を肺に入れ込む

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この技術は、できるだけ多くの酸素を持っていく、高気圧下で肺が潰れにくいようにするという二つの意味がある

 

緊張しすぎてない、心拍数も高くない、不安もない、体の力も抜けている、うまくパッキングもできた

 

落ち着いてレディゴーだ

 

さて、最初の20メートル

 

僕は、体がなるべく気持ちよくリラックスできているかだけを意識する

 

今何メートルかな? 

 

潜るのが遅すぎてないかな?

 

などと余計なことは考えない

 

うまーくリラックスしながらの潜行、耳抜きも全く問題がない

 

20メートル地点

 

あらかじめセットしておいたアラームがなる

 

ここからは、大きく3回漕いでフリーフォールにする

 

マウスフィルといって口に思いっきり空気をキープするのもこのタイミングだ

 

27メート地点

 

口にはパンパンの空気

 

そして、フリーフォール開始

 

ここからは一切こがずに72メートルまでひたすらぼーっとする時間だ

 

やることは一つ耳抜きだけだ

 

おととい覚えたテクニックを駆使できることにワクワクしている

 

冷静に口の中だけに集中し、無駄に力まず、鼓膜、耳管、口の中が一つの空間に繋がってることだけを意識する

 

それ以外の体はひたすらリラックス

 

全ての力を抜く

 

時間の感覚がよくわからない

 

体は気持ちよく、ゆっくりと沈んでいく

 

呼吸ができないという圧倒的不自由環境にいるが、静かで、雑念はなく、体はリラックスして気持ちいい

 

もちろん苦しいという感覚は一切ない

 

ただ、ぼーっと地球の重力に引っ張られて、抗うことなく身を任せている

 

耳抜きも全く問題ない、鼓膜は適切な位置をキープしている

 

目は少しだけ開けている

 

ぎゅっと瞑ると力が入り、思いっきり開けるとリラックスできない

 

半目がちょうどいい

 

目に何か飛び込んできた

 

シマシマのロープだ

 

この印は72メートルのボトムがもう少しということを意味する

 

意識を少しだけしっかりさせる

 

ボトムだ

 

手を伸ばし、ボトムに付いているタグを取る

 

10センチくらいのひらひらのもので、これを地上に持って帰ることで下まで行ったきたことの証明とする

 

冷静にゲット

 

そして無くさないように、フードの奥底に入れ込んでおく

 

さて、ここからは浮上の時間だ

 

力まず、早く漕ぎすぎず、ストロークは長く、焦らず、フォームを効率的に努め、ひたすら漕いでいく

 

目線は目の前のロープだけを見る

 

上は見ない

 

今だけに集中する

 

少しだけ周りが明るくなってきた

 

それと同時に人が目の前に現れた

 

セーフティだ

 

25メートル地点まで迎えに来る

 

僕がやばい状態じゃないことをセーフティにアイコンタクトで知らせる

 

ここからは肺が元の大きさに戻り、浮力が強くなる

 

あまり漕がずとも浮いていく

 

残り10メートル

 

上がった後、呼吸を深く大きくすることだけを忘れないように自分にリマインド

 

そして、浮上

 

ロープを右手で思いっきりホールド、呼吸を大きく3回

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冷静に、ゴーグル、ノーズクリップを外し、ジャッジを見つけ、手でOKサインを作り、

 

『Im OK』と発声

 

 

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この後も気を抜けない意識が足りず、気道が海に浸かると失格となるため、右手はしっかりホールド

 

20秒待つ

 

ジャッジが白いふだを目の前に出す

 

ホワイトカード、72メートル自己新記録成功だ!

 

嬉しい!そしてホッとした!

 

大舞台でパフォーマンスを発揮できた自分の精神力を褒めたい!

 

そして4ヶ月支えてくれた家族に感謝、特に妻のゆきちゃんありがとう

 

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最高の大会になりました!

 

その後は、

 

わざわざ大阪から応援にきてくれた松浦さん、荻野さんとビールで乾杯

 

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一週間の禁酒後はうまい!

 

成功できて本当に良かった!