この記事はここからの続きです。
僕は今申告ボックスの前で悩んでいる
明日何メートル潜ればいいのかを
68?
69?
70?
71?
72?
フリーダイビングの大会では前日に潜る深度を自分で決め、紙に書き申告ボックスに投函する
自分の能力を客観的に把握し、次の日の自分のコンディション、天候、順位を予想し適切な数字を紙に書く
明日の自分のコンディションはいいとしても、天候はあまり予想できない
参考までに現在の天候はこんな感じだ
しとしと雨
凍えるような寒さ
海況悪し
つまり最悪だ
そして明日はさらに悪くなってるとの予報だ
ちなみに本日開催予定だった女子フリーイマージョンは海況が悪く延期
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そして前日の男子ノーフィンは開催はされたものの、海況悪く
申告より手前で帰って来るイエローカード
ブラックアウトをしたり、うまくIm OK が出せずに失格となるレッドカード
のオンパレード
僕の小さな心はそれだけでも震え上がり、頭でこんな声が囁かれる
『余裕で行ける深度にしちゃえよ』
『挑戦することないって、海況も悪いんだし』
『ブラックアウトしたら恥ずかしいじゃん』
『無理はダメだって!安全第一!』
安心を求める体の声だ
体が行くなと言っている
僕の今までの自己新記録は70メートル
当日の緊張による心拍数の増加、海況、水温の冷たさ、天候の悪さ、これを差し引いたら68あたりが妥当か
うん、無理は禁物68で行こう
ペンを持ち、紙に6と書きかけた時全く違う気持ちが湧いて来た
『お前は安心感を得るために潜るのか?』
『自己の限界にチャレンジしたくないのか?』
『やりきった達成感を味わいたくはないのか?』
うーん、悩ましい
2つの全く違う考えがここにある
安心をとるか、挑戦をとるか
ちなみに体は安心を取れと言っている
未知の深度に挑戦することにビビってるんだ
でも体の気持ちはわかる
体は挑戦なんてしたくない安心安全に日々を過ごすことを目的としているからだ
しかし僕の頭は異なる見解だ
挑戦したい
と言っている
わかりきったところに行くなんてつまらない
新しい刺激に触れてみたい
練習の成果を発揮したい
と言っている
さてどっちをとるか
少し悩んだ末、刺激好きの僕は挑戦を選ぶことにする
体ごめんなさい笑
挑戦を選んだからには71以上の選択だ
71について考える
自己新記録+1
なんかキリが悪いので嫌な感じ
うーんなんかパッとしない
ということで却下w
72はどうか?
いい!
なんか良い数字!
なんかワクワクする
とりあえずいい感触
72..
72..
72といえばさゆりのことを思い出す
3年前場所はバハマ
さゆりはノーフィン72メートルを成功させ
女子の世界新記録を更新
世界中の女子で初めてフィンをつけず一息で72メートルを潜り、地上に帰ってきた
72は、そんなメモリアルな数字
最後にさゆりに会ったとき
「次はニースで!」
と言って別れた
本当はここで、一緒に潜って、一緒に成功を喜びあいたかった
さゆりの新しい記録を楽しみにしてた
でもそれはもう叶わない
少しでもさゆりのことを感じ、さゆりの見ていた景色を身近に感じたい
そんなことを思った
よし決めた72にしよう!!
さゆりと一緒に72を潜ろう
決めたら早い
あれだけ悩んでいた申告ボックスの前でさっさと72と紙に書き、投函
よしこれでOK、ワクワク
謎の高揚感を得たのも束の間
その5秒後からは未知の深度に対しての不安感が徐々に心の底から湧いて来るのだった
どうしよう明日怖い
次はいよいよ本番です