フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

世界大会練習初日〜雑念だらけのフリーダイビング〜

ここはフランスニース沖合

 

水深20メートルの地点

 

僕はなぜかここにいる

 

しかも、地上からは、ありえないくらい貧弱な装備しか持ってきていない

 

・3ミリのウエットスーツ上下

・鼻栓

・ダイビングウォッチ

・首に巻いてるウェイト1.7キロ

 

スキューバタンクを持ってきてないため、しばらく息を吸っていない

 

水面で息を吸い込んだあと現在も息を止め続けている

 

そして僕は今悩んでいる

 

さらに深く潜るか

 

それともさっさと水面に戻り息を吸うか

 

ここは夏のフランスニース

 

地中海にはとてもあったかく陽気で開放的なイメージが 僕にはあった

 

しかし現在、イメージとは完全にかけ離れた場所に僕は存在している

 

水温21度でとても冷たく、息もしばらくしてない、誰もいないので孤独で、かなり強力な圧力が全身を覆っている

 

冷静に考えて全く良いことはないので、さっさと水面に帰るべきなのだが、僕はさっきからずっと悩んでる

 

もう10メートルだけ行ってみようか

 

幸いもうすぐフリーフォールにはいる

 

泳いだり漕いだりせずとも、僕の体は勝手に沈んで行ってくれているのだ

 

もう10秒悩み続けたら10メートル下まで行けることになる

 

とりあえず悩み続けよう

 

 

ここは水深30メートル

 

そろそろきつくなってきた

 

息が苦しんじゃない、水が冷たすぎるのだ

 

水温は19度

 

僕がよく行く銭湯の水風呂とちょうど同じ水温だ

 

手足の先がビリビリするのはまだ我慢できるとしても、

 

顔にダイレクトに当たる冷たい水がまじできつい

 

目は1ミリも開けることができなく

 

目を思いっきりぎゅっとつむっている

 

体はこわばり無駄な力が入り耳抜きがしづらくなってきた

 

心の中では

 

「無理無理無理無理」

 

と唱え続けている

 

しかしまだ悩んでいる

 

もう10メートルだけ行ってみようか

 

幸い今は絶賛フリーフォール中、ほっといても沈んでくれる

ここは水深40メートル地点

 

もう無理だ

 

帰ろう

 

水温はさらに低下し自分のキャパを完全にオーバーしている

 

僕の水温の許容範囲は相当狭い

 

なぜなら僕はフランスに来る前は南国フィリピンのあたたかい海で練習していたからだ

 

フィリピンの海はよかった

 

水温29度の適温、深いところも変化なし

 

適温に包まれた体はリラックスそのもの

 

あたたかーいぬるま湯に包まれて

 

どこまででも深く潜れる気がしていた

 

それが今はなんだ

 

水風呂以下の水温

 

冷たすぎて耳抜きもできやしない

 

体はこわばって悲鳴をあげている

 

そんな時、フィリピンでこんなこと言ってる友達のことを思い出した

 

『今日水温27度しかないから練習やめとくわ。リラックスできないし』

 

そしてその時の俺

 

『どんな環境でもリラックスして潜る。それが本物のフリーダイバー(`^´) ドヤッ!』

 

あ、自分で言ったこともついでに思い出してしまった。。。

 

有言実行

 

もう少しだけ深く潜ることに決める

 

ここは水深50メートル

 

さて身支度を整えてお家に帰る時間だ

 

冷たさに耐えてよく頑張った

 

本来フリーダイビングは我慢して潜るもんじゃないからね

 

リラックスしながら潜るもの

 

リラックスできずに体が嫌がってる時は無理しないもの

 

これフリーダイビングの基本だから

 

無理したら大会本番にも影響するし、良くない良くない

 

海に変なイメージつくのも良くないし、これ以上潜ってもいいことないよ etc...

 

浮上すると決めた途端、それを正当化する理由を100個くらい一気に思いつく自分に驚きながら

 

浮上開始

 

徐々に暖かくなってきた水と、徐々に明るくなってきた海に心地よさを感じながら

 

一気に浮上

 

水面で130秒ぶりに息を吸う

 

素晴らしい開放感

 

地上っていいね!

 

と思ったのも束の間

 

同時に大きな不安も一気に押し寄せた

 

『こんなんで本番ちゃんと潜れるのか、、、、』

 

続き

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