フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

そうだ、退院しよう

この話は

手術室の中で激痛に耐える - フリーダイバー菊本

ここからの続きです。

 

 

夜目覚めた。

そしていいことを思いついた。

 

そうだ、あした退院してしまおう!

 

 

勝手に決めることにした。

 

 

もはや口から食事が食べれる状態だし、寝てるだけなので退院してもゆっくりしておけば不具合はないはずだ。

 

 

やはり自分の人生は自分で選択していかなければならない。他人のレールに乗った人生なんてまっぴらだ。

 

おれのことはおれが決める。点滴というチューブがつながっているが、こんなものは砂糖水なので、退院したらポカリでも買って飲もう。はずしても問題はないはずだ。

 

明日の朝医者に言おう、今日退院しますと。

 

 

退院させてくださいではないのだ。

 

キャナイ?ではない。アイ シュドゥと言おう。

 

 

もう、明日のホテルをとってしまおう。得意の背水の陣作戦だ。

 

 

いそいで、ホテルをagodaで探す。なんと便利な。携帯ひとつで全て予約できる。

 

 

ちょうど、いいホテルが見つかった。評判もいい。通常2000バーツ(6000円くらい)が800バーツでセールしている。

 

 

しかもシーロム通り沿いなので、タニヤもパッポンも近い。遊ぶにはもってこいだ。

 

最高だ。なんの躊躇もなく2泊分予約する。

 

よしよし、これで明日はホテルに泊まれる。わくわくしてくる。勝手に退院が前提でものごとが進んでる。で、退院したら、荷物ホテルに置いて、日本食屋行って、ゴーゴーバー行ってー・・・

 

さっきまで、ゆっくりしておけば退院しても大丈夫だという考えから、退院したら遊ぼうと思ってる。恐るべし、アホすぎる俺。

 

引き寄せの法則、思考の現実化。自分に都合のいい時だけ、いい言葉が浮かんでくる。そうだ、思えば現実化するんだ。

 

医師の承諾も得ないまま、勝手な妄想が膨らむ。

 

楽しい。

 

エアも予約しようとしたが、それはさすがにやめておいた。不可能だったときのリスクがでかすぎる。そうだ、あさって、カオサンの様子を見に行って、チケットもそこで取ろう。楽しみが増えていく。

 

タイガーズーもだれか面白いって言ってたな。とらでも撫でに行くか。もはやゆっくりのゆの字もなくなっている。

 

わくわくして寝れなくなってきた。

 

遠足前の子供の気分だ。まずいまずい、明日は体力を使うのに寝ておかなければ。そんなときはいつものヘーゲルと。5分後眠りにつくのだった。

 

 

翌朝

 

 

食事が運ばれてきた。お、うれしい。なんだなんだとふたを開ける。

 

コ、コンソメスープだ・・・

 

一口食う、いや飲む。昨日と同じだ。うすすぎる。

  

そして、もうひとつはまさか・・・

 

そう、予想通りの米のとぎ汁だった。いや、おもゆだった。

 

 

そしてなぜか今日は牛乳がついている。

 

 

全て半分以上残す。

 

こんなもので腹一杯にはできない。今日はなにせ日本食が待っているのだ。

 

胃のキャパを無駄にしてはいけない。

 

昨日とは正反対のことを考えてる。なんと勝手な人だ全く。

 

 

朝10時 

ナースコールをする

 

 

じょう「ウェン ドクター カミング?」

 

アジアンイングリッシュが身についてきた。

 

 

看「イレブン」

 

 

あーあと一時間か退院まで、わくわく。そうだ退院の準備をしないと。荷物の整理を始める。

 

 

11時 

予定通り医者が検診に来る

 

いつもどおり、血圧と体温をはかり、様子はどうかなどと尋ねてくる。

 

いつ、言い出そうか、焦りは禁物だ。交渉事はタイミングが重要だ。相手の雰囲気とタイミングを見はからう必要がある。

 

同じことを言うのでもタイミングによって失敗することも多い。忙しそうな時に言うとだいたい却下される。相手の業務が一段落した時がチャンスだ。

 

医「オッケーバーイ、シーユートゥモロ・・」

 

じょう「アイ シュド ゴー アウト ディス ホスピタル トゥデイ!」

 

医「は??」

 

タイミングを完全にミスった。4秒遅かった。医者がは?という顔で見つめてくる。

 

 

医「少なくとも明日の夕方までいてもらわないと困るんだけど・・」

 

 

じょう「もう飛行機のチケットとっちゃったし、変更もできないんだよね。あしたの7時出発だからさ。金もあんまないし、帰るしかないんだよ」

 

 

ありえない嘘が口からでてくる。

 

 

医「ノー トゥーアーリー」

 

じょう「そこしか飛行機が空いてなかったんだよ。息子がパパに会いたいって泣いてるみたいだから、さっさと帰らないとやばいんだよ」

 

 

医「だったら、朝まで病院にいてそのまま飛行場いけばいいよ」

 

 

やばいその手があったか。。ゴーゴーバーが遠ざかっていく。。

 

 

じょう「ノーノー腹も痛くないし、自分で食事もできるし、ホテルでゆっくりしとくからさ!」

 

医「ホテル探すのもしんどいし、君そんな大きな荷物もてないでしょ?」

 

じょう「大丈夫、ホテルもうとったし、タクシーでホテルまで行って、部屋までボーイに運んでもらうからさ。一泊してタクシーで飛行場まで行って、あのがらがらに乗せてすぐチェックインで荷物預ければ、持つときないからさ」

 

医「まじ?いける?」

 

じょう「大丈夫だって。ただ、いまからホテルに行ってゆっくり寝て、そのままタクシーで飛行場行くよ。」

 

医「じゃあ、まあいいか、夕方くらいに退院していいよ」

 

 

 

きたーーーー

 

 

 

言ってみるもんだ。思考が現実化した。

ありがとうナポレオンヒル。

思考→行動→現実化 この流れだ。今後とも大切にしよう。

 

医「じゃあ、点滴もとっていいよ。」

 

 

うれしさのあまり自らはずす。看護婦より自分の方が丁寧だ。これで、すべてのチューブから解放された。

 

 

 

おれは自由だーーー!

 

 

 

はらのウォタープルーフも外される。初めて見る縫い跡。少しかっこいい。メキシコマフィアの腹みたいだ。中二病的な考えが頭に浮かぶ。すべてのことをポジティブに捉えられてるようだ。

 

 

とにかくうれしい。

 

 

まずは、シャンプーだ。2回洗っても綺麗にならない。流れる水が泥水化している。念入りに洗う。かゆみが取れていく。あー気持い。

 

 

いよいよ退院の喜びを全身で感じている。抑圧された欲求が開放されようとしている。

 

とりあえずシャワーも浴びたし、次はひげを剃ろう。

 

ひげを綺麗に剃る。

 

病人から一般人に近づいていく。よしもはや着替えてしまおう。ださい病院服なんて着てる場合ではない。綺麗な服を探したら、パンガン島で買ったTシャツがでてきた。

 

それがこれだ

 

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ジャンクフードは死ぬという意味だ 

 

そう、今の俺にジャンクフードなんてもってのほかだ。今は、研ぎ汁とコンソメしか飲めない体なんだから。

 

このことを予想していたかのような買い物当時の自分に親近感と畏怖を感じる。体は未来に気づいてたようだ。

 

 

次はコンタクトだ。

 

視界がクリアになる。世界が広がる。

 

次は歯磨きだ。

 

口がすっきりする。気分がいい。

 

荷物も整理する。サンダルを終い、靴を出す。ヘーゲルも荷物の一番奥底へと収納する。ベッドの背もたれも上げ、私服で座る。用意は万端だ

 

 

 

ふーーー

 

 

 

ゴールはもうすぐだ。もう不安も痛みもない、あとはバンコクの街に繰り出すだけだ。あー入院も今思えばいい経験になったな。などと考えていたとき、ふと

 

 

あれ、実際金いくらなんだろ?

 

 

手術費が30万とは言っていたが、薬代とか、ベッド代とかかるよな、きっと・・・

 

 

急いでネットで調べる

 

 

バンコクの病院は非常に高く、個室の病室では一泊7000バーツのところもある。などと書いてある記事を発見する。

 

7000×6泊=42000バーツ(13万円)

 

 

やべえたけえ・・・

 

 

 

ぷらす他にも食事代が1000バーツ、薬代が1日2000バーツとか書かれてる

 

 

多く見積もって全部合わせて60000バーツ。手術代と合わせると50万円くらい

 

 

手元に50万円しかないため、日本へのエア代、バンコク2泊分の滞在費、ゴーゴーバー代なども考えると、40万円くらいまでしか払えない

 

 

やばい、どうしよ・・得意の値切りか・・・もう40万円超えたら、値切るしかない。

無い袖は振れない作戦だ。もう、状況は変えられないので不安になってもしょうがない。

 

ポジティブポジティブ。

 

 

14時 

看護婦がシーツを変えに来た

 

もう、変える必要はない。少しでも入院費を安くしようと断る。

 

 

15時 

看護婦が入院費の明細を持ってくる。いよいよだ。恐る恐る明細を見る。

 

 

 

合計110000バーツ(34万円)

 

 

 

きたーーーーー

 

 

 

助かったぜ、予想よりも安い。良かった。これで不安材料は何も無くなった。だが試しに値切りたくなった。

 

 

「ディスカウント OK?」

 

「ノー インポッシブル」

 

0.5秒で却下された。

 

 

まあいいだろ。こっちも言ってみただけだ。支払いを済ませる。タクシーを呼んでくれと看護婦に伝える。

 

 

16時 

用意ができたようで看護婦が呼びに来る。もうさっさと病室をでてくれと。荷物を病院のスタッフが持ってくれる。そしてなぜか車椅子が用意されてる。

 

 

もう病人ではないので車椅子は断る。座席を譲られ怒る老人の心境が少し理解できる。

 

 

車椅子を運んできてくれた下っ端ぽい人が少し悲しい顔をしてるので肩を叩いて、チップをあげる。喜ぶ。単純だ。

 

 

エレベーターに乗る、一階のボタンを押す。ここが9階だったことを初めて知る。

 

 

一階に着く。かなり綺麗だ。相当いい病院だったことを初めて知る。(のちに地下鉄とかでこの病院の広告をしょっちゅう目にすることになる。Samitivej Hospitalsだ。バンコクで手術する際は是非w)

 

 

タクシーが待っていてくれた。病院のスタッフがホテル名をドライバーに告げる。荷物をトランクに入れられる。そして客席に僕は意気揚々と乗り込んだ。

 

 

じょう「シーユーコークンカップ」

 

 

なんだかんだで命を助けてもらった病院。ありがたい。

 

もう来たくはないが、なんだかんだでいい経験にはなった。いろんなこと勉強させてもらった。

 

体重も6キロ減った(のちにホテルの体重計で確認)。

 

人間てなんなんだろう?とかいろいろ考えた。

 

家族の大切さを知れた。感謝の意味が少しわかった。体が資本だよの意味がわかった。ヘーゲルも3ページ読めた。保険の大切さを知った。お金の大切さを知れた。一生懸命生きなきゃだめだなって思った。

 

 

などと真面目なことを考えたのは一瞬でその後ホテルに荷物を置き、0.5秒でバンコクの歓楽街に繰り出すのだった。

 

おわり