フリーダイバー菊本

魚突き、フリーダイビング、息止め、空家再生の話を書いていきます

手術室の中で激痛に耐える

この話は

飛行機の中激痛に耐える - フリーダイバー菊本

からの続きです

 

 

手術室は薄暗かった。さっきまで話していた日本語が話せるスタッフは中まで入っきてはいない。

 

よくドラマとかで見る、マスクに青っぽい服装を着た人達が5,6人周りを囲っており、全員両手を胸の前で上に向けている。

 

これは消毒済みの手を汚さないために、床からできるだけ手を離れさせ、かつ、目の前に手があることで余計なものを触れさせないためのお決まりの仕草だ。

 

青色は赤色の補色にあたり、簡単に言うと、白色より目が疲れない。

 

と、そんな冷静なことは当時考えられている訳もなく、手術室に入ったとたん、看護師ぽい人が3人よってきた。

 

 

看「きゃきゃきゃきゃ?」

じょう「カップ」

 

看「きゃきゃきゃきゃ?」

じょう「カップ、カップ」

 

看「きゃきゃきゃきゃ?」

じょう「うーん、カップ」

 

うーん、全くわからない。

 

せめて英語で喋ってくれ。とりあえず、起き上がれとジェスチャーで言ってる。そしてパンツを脱げと。くるぶしまで下げる。

 

 

看「のーのー」

 

パンツを中途半端な位置まで戻される。

 

毛だけが出てる状態だ。

 

しかし、残り二人の動きが怪しい。カテーテルというのかチューブ的なのをそれぞれ一つづつもっている。そして一人はローション的なものを先に塗ってる。

 

 

不安だ恐ろしく。

 

どこに突っ込まれるんだ。しかも2本。

 

 

そっちに気を取られてると、もうひとりは想像通り、毛を剃りだした。毛くらいは全然問題ない。大いに剃ってくれ。今の状態からしたら、そんなことは鼻くそみたいなもんだ。全く問題ない。

 

そして、同時進行で二人が寄ってくる。それぞれ両手にながーいチューブを持っている。

 

看「きゃきゃきゃきゃ?」

じょう「カ、カップ・・・」

 

 

その時だ

 

 

 

ずきーん!!

 

 

今まで感じたことのない気持ち悪さが、全身を走る。

 

 

じょう「うわーーーー!」

看「リラックス、リラックス」

 

全くリラックスなんてできない。リラックスの状態とは逆の状態だ。なんせ、ちんちんの先からさっきのチューブをぶち込んできてるのだ。しかも結構荒い。日本みたいなおもてなしの心は持ち合わせてないようだ。

 

 

ぐいぐいくる

 

いてーー!うわー!ぎゃー

 

叫びまくる

 

ちょっとゆっくり挿入してくれるかと思いきや、看護婦は全員にやにや笑ってる

 

さすが微笑みの国。極限の状態でも笑顔は忘れない。

 

荒さは変わらない、ぐいぐいくる。

 

そういえばちんちんにマドラーを入れるやつがいるとは聞いたことがあるが、それくらい太くなると気持いのかもと、ありえない考えが頭をよぎる

 

 

そして、もう一人の看護婦がおもぐろにチューブを顔に近づけてくる

 

そうだ、忘れてた、もう一本あったんだ…

 

絶望的な気分になる。どこに次は挿入してくるんだ…

 

というか麻酔のあとにやってくれればいいのではないか?何か不都合があるのか?

 

怒りがこみ上げてくる

 

挿入先、答えはだった

 

徐々にいれてくる。こちらの看護婦はおもてなしのおの字くらいはあるようだ。少しだけ丁寧だと感じる

 

お、意外と余裕だな、がんがんこいやーと思ったら不覚だった

 

喉のあたりまでカテーテルが入ってきたとき

 

 

おえーーー!うおえ、おえ!!うわ、ぐはぐは!

 

ありえないくらい気持ち悪い

 

絶対無理だ!気持ち悪すぎる!入らないよー、無理無理やめて

 

ちなみに、ちんちんも同時進行中のため、

 

 

おえー!!ぐは、おええええ!いてー!ああ…う、ぐはー!

 

 

叫びまくる

 

 

 

もう嫌だ、2穴同時に犯される恐怖と痛みに耐え続けないといけない。しかもこのタイミングでモルヒネも弱くなってきたため腹も痛くなってきた。

 

 

おえええええ!!いてて、おええええ!いてて、うううう・・・

 

 

おえええとか言うたびに腹に力が入るので、ダブルで痛い。いや、もう一つ忘れてた、トリプルか。

 

 

もうちぬ・・・

 

 

日本語すらあやふやになってきたとき、

 

 

看「オッケー、オッケー、フィニッシュ」

 

やっと、処置が終了したようだ。助かった。良かったおれは耐えたぞ。えらいおれ。自分で自分を褒める。

 

 

おおやっと山場を越えたか・・・・

 

 

いや、ただ単に手術の前準備が終わっただけだ。

 

 

これから、いよいよ手術か・・・

 

全身麻酔で頼むよ。意識ある状態で腹切られるのは怖いよ。びびってんじゃねーと言われるかも知れないけど、ビビるよ本当に。

 

 

手術の前準備が終わったことに少しの達成感と脱力感を感じながら、全身麻酔の希望を胸に抱き、次の作業を待つことになるのだった。

 

 

 

 

手術はあっけなかった。

 

 

 

目を開けたら、周りは誰もいなく個室であろう病室に一人で寝ているだけだった。痛みはほとんどない。

 

あー終わったんだ。

 

安心感で満ち溢れる。

 

しかし記憶はあやふやだ。手術の前準備が終了した後のことを思い出してみる

 

 

前準備終了からのガスマスクみたいなやつが顔に近づいてくる。

 

 

看「ブリーズ、ブリーズ、リラックス」

 

 

ゆっくりと吸い続ける。そしてゆっくり吐き出す。

 

 

ふーはーふーはー

 

 

4回くらいまでは覚えている。その後記憶がとぎれ今に至ってるようだ

 

 

あ、そうだ腹はどうなってるんだ?

 

 

腹を恐る恐る見てみる。

 

 

縦に割かれたようで、縦に細長くウォータープルーフ的なものが貼られている。

腹にすこし力を入れてみる。

 

痛い・・・・

 

 

だが、絶頂期の痛みの50分の1くらいだ。あの痛みを超えたおれからしてみれば、無いのと等しい。

 

余裕、余裕すぎる。

 

 

あー生きてるんだ。良かった。充実感が体を巡る。時計を見ると短針が6を指している。朝か夕方かはよくわからないが、とりあえず長時間耐えられた。

 

 

痛みが発動したときは、いろんな不安と激しい痛みに襲われた。

 

原因は何?これからどうなるの?病院はどうすればいい?言語は通じるのか?お金はどれだけかかるのか?飛行機に乗れるのか?死ぬのではないか?

 

すべての不安と痛みは解消された。

 

金も払える程度で良かった。まだ不明だが手術も成功したのだろう。あー良かった。

 

生きてるって素晴らしい。

 

すべてのことへの感謝の気持ちが溢れてくる。

 

命は今後大切にします。よくかんでご飯をたべます。アルコールは飲みすぎません。MDMAはもう摂取しません。体を大切にします。

 

自分の中でいろいろなルールが成立していく。

 

ここで斎藤一人の言葉を思い出す。

 

 

「胃が悪い人は食べ物への感謝がたりないんですね」

 

 

営業マンを経験していたこともあり、食事は早く食べることが美徳だという価値観に犯されていたことに気づく。仕事の合間の5分で食べて、すぐお客様のもとへ

 

 

それが正しいと今まで思ってきた。早く食べれば食べるほど、食事のことは考えなくなる。早く食べることに集中するからだ。

 

 

感謝の気持ちが少しでもあれば、このにんじんは農家の人が一生懸命作ったものなんだな。この豚肉は人間のために育てられて、そして殺され僕たちの食卓に運ばれてきてるんだよな

 

 

考えれば当たり前のことだが、自覚はできてなかった。僕は感謝が足りなかったのだ。

 

感謝するということは、ただの道徳論とか精神論ではない。命を頂いてるんだから感謝すべきという話ではない。自分の体への直結的な様々な不具合を防ぐことになるのだ。

 

「より良く生きるためには感謝したほうがいい」

 

 

すべきとか言われると、天邪鬼な僕は、なんで?とか思っちゃうんだけど、したほうがあなたのためですよ。という理屈を身を持って体験できて、いにしえからの言い伝えが理解できた。

 

感謝するということは、食べ物に限らず、その対象をよく考えるきっかけになるってことなんだな、きっと

 

 

人から何かしてもらった時でも、感謝の気持ちが大きければ、その人のことをより深く考えることになる。

 

その結果、その人の喜ぶことがだんだんわかってきて、今度は僕がお返ししてあげようとか考えて、結果その人は喜ぶ。

 

このようないい循環が生まれればさらに自分にも返ってくる。自分も人も良くなっていく。たぶん、そうゆうことなんだろうな

 

 

僕はなんでもポジティブに考えられる方だが、痛さと引き換えに、重要なことを学んだきもちになり、すこしうれしくなった。

 

 

さて、入院生活ですが、6日間ほぼ同じ生活だったので、代表的な一日をご紹介

 

 

朝9時

目覚める

 

朝10時

リー君から電話が来る

「大丈夫け?じょうちゃん」

 

「うん、なんとか」

 

「がんばってや!」

 

「ありがとう」

 

短いやりとりだが励ましになる。ありがたい。

 

朝11時

妻から電話が来る

 

励ましてくれる。うれしい

 

12時 

息子の動画が送られてくる

 

出発前は6歩しか歩けてなかったのが、10歩ほど歩けてる。こいつも成長してるんだ。自分も頑張らないと。息子の成長に励まされる。

 

12時半 

看護婦が血圧と体温を測りに来る。上140 下110 体温37度5分とありえない高さになっており、少しびびる

 

13時 

持ってきた、ヘーゲルを読む。難しすぎるため、1ページで睡眠

 

15時 

起きる。テレビをつける。奇跡的に映画チャンネルがあるため、多少楽しめる。しかも言語は英語だ。

 

16時 

仕事関連の人に一週間ほど帰国が遅れる旨電話する。通話料は高いため、ライン電話をする。ライン最高。

 

17時 

看護婦が点滴を変えに来る。ついでにたまったションベンを捨てる。看護婦とからむ元気はあまりないため、機械的に作業は進行する。

 

18時 

暇なので、点滴の成分を調べる。5%グルコースと書いてある。要は砂糖水だ。今は胃の傷を治療するため絶食中なので栄養は点滴でしか得られない。しかし、いままで風邪の時に打たれていた点滴は無意味だったと知る。ネットで調べてみると、生理食塩水の場合もあると書いてある。要は0.9%塩水だ。

 

19時 

ドクターが検診にくる。ドクターは看護婦と違い英語がしゃべれるので、15分ほどおしゃべりをする。

 

20時 

ネットで病名を調べる。胃穿孔(いせんこう)と書いてある。胃壁に穴があき、胃酸がもれ、他の臓器をじゅうじゅうと焼く等恐ろしいことが書いてある。それ以上に胃酸が塩酸だという事実を初めて知る。塩酸が胃からもれ他の臓器を焼いていたのだ。内部から焼かれるような痛さはそのせいだった。そしてショックで息ができなかったようだ。

 

つまり、僕は日頃から弱っていた胃を抱えていたが、今回の旅で大量に摂取したMDMAが最後のトリガーを引いたと思われる。

 

MDMAは口から飲み込む錠剤型のドラッグで、飲み込んだ後、消化するまでの間錠剤が胃に付着し続けるので、その部分が炎症し、最終的に穴が空いたのだ。

 

何時間も臓器を焼かれ続け、耐えた自分を褒める。そりゃ死にそうと思うわ。。

 

21時 

看護婦が体をふきに来る。真っ裸にされるがもはや、恥ずかしさはない。局部もふかれるが、栄養不足のためか元気になることはない。というか、ここの看護婦の顔は全員個性的だ。もしかして、あまり美人の人は看護婦に向いてないんじゃないかと失礼なことを考える。

 

22時 

となりの病室のおばあちゃん患者が「あーーーーー」とか騒いでる。刺激がないのでおもしろい。看護婦はすごく嫌な顔をしている。

 

23時 

そういえば何日も食べてないことに気づく。というかベッドからすら一歩もでていない。寝たきり老人と同じだ。腹は減らない。

 

点滴で栄養をまかなっているからだろう。人間は点滴だけで生きていけるようだ。しょんべんも強制的に排出させられている。鼻のくだからは黄色い液体が吸い出されビーカー的なものに溜まって言ってる。胃に溜まった血とか胃液が混じったものだろうか。

 

 

24時 

暇だ。数日しかこの生活をしてないが、人によっては何年もこんな感じで生きてる人もいるのだろう。

 

わずか、数メートル先に見える窓からの景色も見ることができず、ただただベッドで寝ているだけの人がいる。希望もなく生きることに生きるだけだ。死ぬときはポックリいこうと心に誓う。ぴんころ地蔵が恋しくなった。

 

 

25時 

寝るためにヘーゲルを手元に持ってくる。1ページ読んだら眠くなってきた。ナースコールで看護婦を呼び、「スイッチ オフ プリーズ」というが通じないので、「ノーライト」と言う。電気すら自分で消せない自分が情けなくなってくる。今日はまくらを濡らそう

 

 

25時5分 

寝る

 

以上毎日繰り返す

 

いつまで続くかと思われた入院生活だが、4日目の夜希望が見えた。ドクターが検診にきた際、

 

 

「あした、ちんちんと鼻のチューブとるよー」

 

と言ってきた。

 

うれしいうれしすぎる。テンションが上がる。

 

生活レベルが低いと普通になることがうれしすぎる。金持ちになっても質素な生活をこころがけようと、勝手に金持ちになることを考えている。

 

記念になるかなと一枚撮った写真があったので掲載

 

 

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5日目昼過ぎ、看護婦が来た。どうやら予定通り、チューブを抜くようだ。また、荒くされるといやなので、「キャナイ ドゥー マイセルフ?」と尋ねる

 

「オッケーオッケー」

 

 

意外とゆるい

 

慎重にちんちんの方から抜く。気持ち悪いが入れるときより50倍マシだ。無事に抜けた。次は鼻の方だ。

 

のどを空け、鼻からチューブをゆっくりと引っこ抜く。おもったより長く入っている。1メートル弱くらいか。

 

無事に抜ける

 

 

きたーーーー

 

 

なんだこの開放感は。

 

登ったことはないが富士山の頂上まで登った時のような気分になる。鼻くそも無事にほじくれる。のみこんでも喉が痛くない。なによりもおれを縛っていたチューブが二本も抜けて、移動が可能になる。(まだ、点滴は繋がっている)

 

 

うれしさのあまり写真撮影。表情が晴れやかになった。

チューブ取れた

 

 

あーうれしい。やりとげたぞ。ゴールはもうすぐだ。さらにうれしい情報が医師から伝えられる

 

 

「よる、ごはんでるよー」

 

うれしい。まる五日絶食状態なので、腹は減ってなかったが聞いた瞬間少し腹が減ってきた。こんなにも飯を食うことに希望を感じたのはいつぶりだろう。体よ、よく痛みに耐えて頑張った。

 

感動した!

 

 

貴乃花に少し近づけた気がした

 

 

19時 

待ちに待った食事が運ばれてきた。

 

大きなそこの深い皿が二つもある。ふたがしまってるため、中はまだ確認できない。

 

ふたつもあるなんて豪華ではないか。

 

わくわくしてくる。ひとつを開けてみる。コンソメスープぽいものがはいってる。すかさず食う

 

 

う、うすい。

 

 

おれの知ってるコンソメスープの濃さではない、10倍ほど薄めたやつだ。うまくない。感動が徐々に冷めていく。

 

 

いや、しかしもうひとつ望みはある。もうひとつにかけようではないか

 

 

ふたをあける。白っぽい、またしてもスープぽいものが入ってる。飲む

 

 

こ、これは・・・・

 

 

 

 

 

こ、米の研ぎ汁だ・・・

 

 

 

おしゃれな言葉でいえば「おもゆ」だ。あかちゃん以来だから30年ぶりに食った。いや、飲んだ。

 

ま、まずい。まずすぎる。

 

 

すかさずコンソメを飲む

 

 

う、うまい!

 

 

人間とは不思議なものだ。比較対象が低いと、もう一方が輝かしく見える。贅沢は敵だなと再認識する。

 

 

しかし、まずいが食うしかない。栄養補給だ。久々に食べる、いや飲むため、ゆっくり飲むことを心がける。一口一口慎重に、感謝を忘れずに飲む。

 

 

徐々にうまいと感じてくる。生きている感じがしてくる。やはり感謝はすごい。味覚さえ変化させられる。いつもなら3分くらいで飲める量を30分くらいかけて飲む。

 

味わいながら、そして修羅場に耐えた経験を思い出しながら、少しづつ飲んでいく。おいしい、ありがとう胃。いままで無理させてごめんな。これからは大切にするよ。他の臓器くんたちも大切にするよ。ありがとね。

 

 

まずいものを飲みながら感動している。不思議だ。胃が急に動き出したのを感じる。知らないあいだにみんな働いてくれてるんだな。おれもこれから頑張るよ。

 

長い時間をかけた食事がおわり

 

 

あー一服して(^。^)y-.。o○あそこの窓開けてタバコ吸ったらばれるかな?

 

 

とありえないことを考え出す自分に驚き、またヘーゲルを読み出すのであった。※5分後眠りにつく

 

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そうだ、退院しよう - フリーダイバー菊本